FIXERさんからキリバンで頂きました小説です。
原版の、FIXER氏のサイトはこちら North Load

□死が泊まる場所、生が止まる場所

~ 1 ~

『解っちゃいたんだよなぁ・・・。
終わっちまったからしゃあないけどさぁ。』

『なんか、やるせねぇよ。』

『恨み・・・なんだろうな、この感情は。』

『俺達だって人間だったからさ。』

『もう一度だけ・・・行って見るか。』

~ 2 ~

「・・・映画じゃあるまいし、んなアホな事があるのか?」
助手席に座っている40代後半位の中年警察官が呟いた。

「そんな事言われましても・・・目撃情報から考えたらその場所が臭いという結論になりまして。」
パトカーを運転している20代半ば位の警察官がうろたえながら答える。
まだ新米のようだ。餡パンを中年警察官に渡した。
「街から数キロ離れてますし、失踪と言うよりもその場所に住み込んだと考えるのが妥当ではないでしょうか?」

「ったく家出かよ。何お前、廃ホテルで行方不明者とか言ってるんだよ。ややこしい・・・。」
中年警察官は呆れた様に言った。
「すみません。」
新米警察官が運転しながら頭を下げる。

「ったく、しかも、よりによってあの廃ホテルとはな。」
中年警察官は顎鬚を弄りながら溜め息を吐いた。
「ん?何か曰く付きの場所ですか?」
首をかしげて新米警察官が聞いた。
「いや、なんでもない。ただ・・・。」
ここで中年警察官が一息ついた。
「単に霊が出るとかで有名だと聞いたことがあるだけだ。」

~ 3 ~

「着きましたね。」
新米警察官が呟く。

二人の警察官の前には使われなくなった少し古そうな、それでも大きい建物が聳えている。

「鍵が壊されて入りたい放題だな。」
扉を慎重に開けながら中年警察官は呟く。
「・・・見ろ。蜘蛛の巣を掻き分けた跡がある。」br> 中に入ると天井が吹き抜けの広いロビーで明るい太陽の光が差し込んでくる。

「絨毯にも沢山の足跡があります・・・が、これは数が多すぎですね。」
新米警察官が視線を落としながら言った。
「それだけここが使われたい放題って事だろう。後で封鎖するぞ。」
「はい。」

「えーと、この建物は13階建てで3階から12階まで300個の客室、1階はロビーや売店、ゲームセンター、ロッカールームになってまして、2階がレストランが集
まってます。13階は温泉になってますね。地下一階はボウリング・・・。」
新米警察官が資料を見ながら説明してる。

「設備は豊富だが・・・電気系統が止められてるからここに住み着いても使えないのにな。」
中年警察官がロビーを見渡しながら呟く。
「でも、これだけのものがありながら何故何処も買収しないんでしょうかねぇ。」
新米警察官は頭を掻いた。
「さぁな、先ずは地下から見ていくか。」
言うや否や中年警察官は歩き出した。
「あ、はい。」
急いで後を追う新米警察官。

~ 4 ~

「懐中電灯寄越せ。」
階段の手前まで来ると中年警察官が言った。
無言で新米警察官は懐中電灯を手渡した。

「やっぱ地下は真暗だな。」
懐中電灯のスイッチを入れつつ中年警察官が呟いた。
後ろでは新米警察官も自分の懐中電灯にスイッチをいれた。

地下のボウリング場は12レーンまである至って普通のものだった。

「特に何もなさそうですね。」
懐中電灯を左右にゆっくり振りながら新米警察官が呟く。
「ないに越したことはないがな。」
戻ろうとした時、急に一つのレーンだけが動き出した。

「な、電気は止まってるハズ・・・。」
新米警察官は絶句した。

ボールの吐き出し口から出てきたのは半分腐った人の頭だった。
顎と頭の一部が既に白骨化している。

次にレーンの先にはポールではなく、八つ裂きどころか綺麗に縦長に十等分された人の体だった。

「こ、この人は・・・行方不明者の・・・!」
一歩下がって新米警察官は目を見開き、口を塞いで呟いた。
「直ぐに本部に連絡しろ!」
中年警察官は叫んだ。
「それが携帯が圏外・・・。」
「馬鹿野郎!ここは地下だ!上の階で急いで連絡しろ!」
新米警察官は急いで階段を駆け上がって行った。

「なんなんだ・・・これは・・・?」
直ぐに階段を下る音が聞こえた。
「駄目です!通じません!」
新米警察官は息を切らせて叫んだ
「ならパトカーの無線を使う!行くぞ!」
「はい!」

~ 5 ~

新米警察官がパトカーに辿り着いた。
しかし、中年警察官がいないことに気づいた。

「先輩?・・・どうすべきか・・・取り合えず連絡優先にしよう!俺だけじゃどうにもならない!」

無線を取って連絡を入れる。

『はい、こちら本部、どうぞ。』
新米警察官は安堵して事情を伝えた。
『了解、君はその場で待機するように。』
「了解。」

~ 6 ~

30分もするとパトカーが数台、鑑識の車、救急車が到着した。
一台のパトカーから年配の男が出てきて、いきなり新米警察官に話しかけた。

「君は、この建物がどういったものか、彼から聞いているのかね?」
年配の男は新米警察官が通っている警察署の署長だった。
「いえ、ただ単に心霊場って聞きましたが。」
お茶を震える手持ってに新米警察官が答えた。
余りに震えてキャップを空けれないでいる。

署長は溜め息を吐いた。
「12位前に、ここは強盗グループの隠れ場だった。それを突き止めて8名の刑事が出向いた。これで逮捕出来たかと思ったのだ。」
淡々と所長は話し始めた。そして、新米警察官の持っているお茶を持ってキャップを空けて一口飲んで返した。
「・・・抵抗してきたのですか?」
新米警察官はまさかと思いながら聞いた。

「勘が鋭いな、君は。まさにそうだよ。それで、結果としてはグループ13名の内8名を射殺してしまってな。後の5名は拘置中に自殺したんだよ。そういえば、子供が
入り込んでいたな。近所の子供で興味があっていたらしいが・・・おっと、話が逸れたな。」
ここで署長は一息ついた。
「その後、私と彼を除いて6名が現場検証行ったんだが、誰一人として生きて帰って来なかった。そして、また大人数で調査を始めたら出てきたのは6名のバラバラ死
体。死因は全て毒殺。結局捜査は打ち切りになったが、それ以来このホテルでは行方不明者が絶えないと。」

新米警察官は絶句したがやがて口を開いた。
「だったら署長は中にお入りになられないほうが・・・。」

署長は自嘲の笑みを浮かべた。
「そんな訳にいかないのだよ。そうだろう?」

そう言って署長は廃ホテルへ入って行った。

新米警察官はただ呆然とそれを眺めていたが、急いで後に続いた。

~ 7 ~

その後、中年警察官はバラバラ死体となってUFOキャッチャーの中で発見された。

また、署長も捜索中行方不明になり、その後、食堂のテーブルの上にやはりバラバラとなって並べられていた。
二人の死因は水銀による毒殺。

結局捜査は打ち切りとなった、が、その後、そのホテルは取り壊された。

ホテルの跡に新米警察官がいた。
そして、菊の花を21本供えた。


「流石、署長だったよ。まさか俺が犯人だと気づいていたなんてな。あんたらにとってあの人たちはワルでも俺に取っちゃ掛け替えのない家族だったんだからよ。」
新米警察官は淡々と呟いた。
「しかし、刑事6人以外に行方不明者だと・・・俺はあの時と今回で刑事8人しか・・・。」

しかし、そのまま新米警察官は倒れた。

その後、ホテル跡に線香代わりと言いたいがばかりに新米警察官のバラバラ死体が供えられていた。


~ 8 ~

『あ~あ、楽しかった。』

『なんか、俺達勘違いされてたけどな。』

『まぁ、いいじゃん。楽しかったし。』

『そうだな、生きている奴等の世界にも一枚噛めたしな。』

『んじゃ、すっきりしたところで休むか。』

『おやすみなさい。』

<完>





原版には、作者FIXER氏の後書きあり。



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