しろねこ。様へ。1551HIT記念。



『クールビズ』



ここは昼下がりのアサシン組織本部。
まっ昼間から、殺気と熱気を発しつつデスクワークに勤しむ人間がいた。
アサシンの仕事は、暗殺だけではない。ターゲットに関するものや、そのほかの書類にも目を通さなければいけない。

…のだが…


「……暑い。もうダメだ。」

この方は…この忙しいときに、なにを言っておられるのだろうか。

「ザトー様…書類はまだこんなに残っておりますが…。」
「ダメだ、暑くてかなわん。」
まぁ、確かにおっしゃるとおりかもしれない。近ごろは暑さも続き、仕事どころではない。

「こんなことは」(机の上に山積みになった資料を指差し)
「全て部下に任せてしまいたい。どうして私は首領なのに……。」

なんか文句言い出したよ、この人。

「ああ、全くどうして、お前は涼しい顔で居られるのだね。ネクタイも緩めずに。見ているこちらが暑くなってしまうよ!」
「慣れればそんなに暑いとは感じませんよ。」
「お前はマジメだね。英国紳士の鑑だな。」

…少しイヤミったらしく聞こえたのは気のせいだろうか。
ああ、こんな人が首領なんて…このままでは組織がっ!とかほんの少し心配になったのも、きっと気のせい。

そうこう言っているうちに、ザトー様はネクタイも外し、だらしなくシャツをはだけさせている。

「ザトー様、だらしないですよ。」
「ん?あぁクールビズだ、クールビズ」
「クールビズとは、だらしのない服装のことではありませんよ。もう。」
「まぁ、そういうな。いま流行りのちょいワルってやつだ。」

貴方の場合、ちょいどころかすべて悪いような気がします。

「…めちゃワルオヤジ」
「…なんか言ったか?」
「いえ、なにも。」
「今、オヤジがどうとか」
「いえいえ、なにも」

危なく聞かれるところだった。

仕事に戻ろうと机に向かうと、またザトー様に話しかけられた。
どうやら首領様は仕事をする気がカケラも無いらしい。

「なぁ、ヴェノム。どうすれば涼しくなるだろうか。」

このお方は、私の仕事をも邪魔するらしい。

「はぁ…」(これ見よがしに大きなため息)
「そんなに暑いのであれば、その影で遊んでいればいかがですか。影ですし、さぞかしひんやりしている事でしょう。」
「おおそうか。そうしよう。」

全くの冗談で言ったのだが、それを真に受けたご様子。…まぁ、コレでしばらくはおとなしくなるだろう。

「おぉ、存外冷たいな、これはいい。」
ザトー様は影のエディをあやしはじめたようだ。当のエディといえば、この暑いなか召喚されて迷惑そうだ。

「あっ、こら戻るな出て来こい!」
普段とは比べ物にならないくらいの速度で戻っていくエディ。何故かエディゲージの消費量が半端じゃない。
ああ、これが暑さの力か…。きっとエディも動きたくないのだろう。
よし、今度からエディを相手にするときは暑いときにしよう、おそらく1度回るだけで帰ってくれるだろう。

そんな事を考えていると、またザトー様がやってきた。にこにこしながら近づいてきた。

「ヴェノム!、ヴェノム!」
「聞こえていますよ。さっきから何です。」
「なかなか涼しかった。どうだ、お前も。」
「丁重にお断りします。存分に涼まれたなら、仕事にお戻りください。」
全く、このオヤジは何を考えているのだろうか。

「……ぇぃ。」

…目の前が、急に暗くなった。
涼しい、どうやら影につつまれているらしい。おや、これはなかなかいいかもしれな
「楽にしてやろう」
ぷっちん

… … …
 ダ ム ド フ ァ ン グ だ っ た 。
… … …

「ザトー様!何するんですか、痛いじゃないですか!」
「ん?暑いから、楽にしてやろうと思ってなぁ。」
ウソだ…絶対にさっきの『めちゃワルオヤジ』が聞こえていたに違いない。

「楽どころか、殺す気ですか!?」
熱気と先の攻撃で、血圧とテンションゲージがMAXのヴェノム。
「いいかげんにしてください!このダメ首領!」
「なんだと!部下が上司に逆らうつもりか!?」

暑さのせいで少しおかしくなっている2人。

「やる気ですか!?」
「お前こそ!」

言うがいなや、上着を脱ぎ捨て、キューを取り出すヴェノム。
対するザトーも上着を脱ぎ捨て、エディを召喚!

HEVEN OR HELL
LET’S ROCK!

ドリル!ドリル!回る!伸びるー!ドカバキバシッ!ハッハー!
甘い!死角を取ったぞ。カーカスラ・カーカスライド!カンッ!バシバシッ!
覚悟を決めろ!ダークエンジェル!
ご覧に入れよう!伸びろっ!

SLASH!


―数分後―
「流石ですね…。」
「これほどとは…。」
「強くなりましたねぇ。」
「いえ、まだまだザトー様には及びません。」
「暑かったですねぇ」
「いえ、熱かったです。」
「そうですねぇ、熱かったですね。」

今の乱闘で、一瞬暑さは忘れられたものの、散らばって書類はぐちゃぐちゃ。

「私は疲れた、少し休むよ。」
そう言って、ザトー様は床に倒れてしまった。どうやら本当に疲れてしまわれたようだ。

あぁ、つまり、この後始末は私がやらなければならないんですね。そうなんですね。

ヴェノムは頭を押さえながら部屋を後にした。


ヴェノムは廊下に出て、自分の姿を見て気がついた。
戦闘中の姿が、一番涼しい格好だということに。

この騒動以降、アサシンの正式な夏服は肩出し全身タイツになったとか、ならなかったとか。
そして、この書類は、後で全部ザトーにやらせたそうな。


END


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